2010年9月18日土曜日

高速シーケンサーの使われ方 1

生命科学関係の学会に行くと、必ずあるのが次世代、あるいは高速シーケンサーの現状と今後の展望、といったテーマのシンポジウムやセミナー。
大きなものでは、バイオエキスポ、12月の分子生物学会。 あとは癌学会や人類遺伝学会など。
また、口頭発表でも高速シーケンサーを使った研究結果がようやくちらほら出てき始めた。

現在、日本には何台の高速シーケンサーが導入されているのだろうか。
大学では旧帝大を始めとする国公立大学はもちろん、私大でも医学部があるところには、昨年度かなりの数が導入されている。イルミナのGenome Analyzer (以下GA)、ライフテックのSOLiDがそれぞれ数十台入ったと言われている。
研究所では、理化学研究所、沖縄科学技術振興センター、産業技術総合研究所、遺伝学研究所に数台、しかし最新式のマシンが導入されている。恐らく、理研は日本で最もたくさんのシーケンサーを揃えているだろう。とは言っても、欧米やアジアのようにまとまったゲノムセンターが無いので、多く見積もっても全体で20台くらいではないか。
北京ゲノム研究所ひとつで128台の高速シーケンサーがあるのとは雲泥の差だ。

では、企業ではどうか?
実験受託をサービスとしているタカラバイオ社にはシーケンスマシンがあって、実際に実験をしている。サービス会社の中には実験をよそに委託している所もあるので、他社はわからない。
製薬企業なども、持っているところはある。

SOLiDとGAは、短いリードをたくさん出力する。
一方ロッシュの454は、比較的長いリードを出力する。
細かい数字は別に挙げるが、短いとは25、50、80塩基のことで、長いとは約400塩基のこと。
SOLiD, GAは数千万から数億本のリードを出力し、454は数十万から数百万本のリードを出す。

454は最初の「次世代」高速シーケンサーと言われ、リード長が長いのでデノボシーケンス(未知の配列決定)に用いられてきた。良く使われたのは、微生物ゲノムのデノボシーケンス。今でも多くの大学で、特に農学部などで土壌菌や麹菌、産業用植物などのゲノム配列決定に使われている。 
またゲノム配列がほぼ決定している種では、SOLiDやGAなどのショートリード・大量データのシーケンサーを使って、遺伝子の発現・トランスクリプトーム解析、SNP探索などをしている大学もある。
タンパク質-DNAインターアクション解析やメチレーション解析は、小規模ながら、医学部などでやっていると聞く。

大学の場合、シーケンサーは実験機器であるので、予算が付く。 メーカーもここぞとばかりに営業合戦をかける。 
そして大量データを解析・保存するために必要な高性能コンピュータにも予算が付く。 システム設計会社もこれに食いついて予算争奪戦が始まる。

ここから先は私の想像だが、シーケンサーを買ってしまった大学の、かなりの所が、その運用に困っているのではないか。
一回の実験に数十万~数百万円かかる試薬の高さはさることながら、大量データを扱うノウハウも人材もない。 特に、中小の規模の大学ではそうである。 

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