2011年7月29日金曜日

SeattleSeq Annotation : WebベースのHuman SNP機能予測システム

SeattleSeq というサイトをご存じでしょうか?
ワシントン大学が運営する、ヒトSNV機能予測データベース&システムです。

Web上でデータをやり取りします。
ユーザはSNVのリストファイルをアップロードして、欲しいアノテーションにチェックを入れ、メールアドレスを入力して、ボタンを押して、後は待つだけ。
インターネット上にデータを投げるわけですから、機密性が低い、公共データやデモデータ、自分で責任の負えるデータ、でやるのが無難です。

ファイルのフォーマットは割合と自由です。ここに詳しく
公共データのReadファイルから、マッピング、SNV検出してきた結果ファイルVCFフォーマットを入れてみましょうか。
VCFフォーマットの場合はちょっとコツがいりまして、SNVのみの結果にしなければいけません。
もしSNVとInDelが混ざって出力されているVCFの場合、InDelのデータは除きます。
VCFからSNVとInDelを分けて別々のファイルに保存するには、
こんなawkファイルを作って、

----------------Separate_SNV_and_InDel.awk     ここから------------------------------
/^#/    {
    print $0 > "snv_only.vcf";
    print $0 > "indel_only.vcf";   
    next;   
    }
   
/^[^\t]+\t[0-9]+\t[^\t]*\t[atgcATGC]\t[a-zA-Z]\t/   {
    print $0 > "snv_only.vcf";
    next;   
    }   
   
    {   
    print $0 > "indel_only.vcf";   
    next;   
    }
------------------------ここまで---------------------------------

awk -f separate_snp_indel.awk [あなたのファイル.vcf]

なんてコマンドを打つと、2つのファイルができて、snv_only.vcf ファイルにはSNVのみのデータが、
indel_only.vcf にはInDelのみのデータが作られます。
このコマンドはあるBio-info仲間が教えてくれたものですが、簡単で重宝しています。

さて、もうひとつ、VCF 4.0 ファイルであることを示すため、できた snv_only.vcf ファイルの先頭行に
##fileformat=VCFv4.0
という一行を入れてあげます。

sed -e "1i ##fileformat=VCFv4.0" [あなたのファイル.vcf]  > [あなたのファイル2.vcf]
これで準備OK。

SeattleSeqの画面を見てみましょう。 http://snp.gs.washington.edu/SeattleSeqAnnotation131/
ヒトゲノムのバージョンが、hg18 と hg19 の2つあるので、hg19を選択。

メールアドレスを入力し、ファイルをUpします。
あとは欲しいアノテーションにチェックを入れて、Submitボタンを押せばOK!
画面が切り替わり、ジョブの進行状況が確認できます。
しばらくすると、メールアドレス宛てに、メールで結果ファイルのURLが届きます。

そこをクリックして、ファイルをダウンロードします。

これがアップロードしたVCFファイル

そしてこれが、SeattleSeqの結果


New で示したところが、SeattleSeqで新しくつけられたアノテーションですね。
VCFフォーマットを保ったまま、INFO のところにrs番号をはじめ、SNVの分類、アミノ酸置換の種類、配列、GranthamScore、PolyPhen分類、などが新たについています。

以下の例で言うとこれらは、rs番号はrs3748597、SNVの分類(FD)はNon-synonymousでmissense、アミノ酸置換(AC)はイソロイシンからバリン(ILEからVAL)、GranthamScore(GS)は29、PolyPhen分類(PH)はpossibly-damaging、というようなことが書かれています。

1 888659 rs3748597 T C 149 . DP=11;AF1=1;CI95=1,1;DP4=0,0,3,8;MQ=60;
FQ=-60;DN;DT;DA=C/T;GM=NM_015658;GL=NOC2L;FG=missense;FD=missense;
AC=ILE/VAL;PP=300/750;GS=29;PH=possibly-damaging;CP=0.5990;CG=2.300;AA=C;
CN=2294,3274,30362;HA=12.1;HE=6.7;HC=6.2;DG;DV=by-frequency,by-cluster;
PS=MAAAGSRKRRLAELTVDEFLASGFDSESESESENSPQAETREAREAARSPDK
PGGSPSASRRKGRASEHKDQLSRLKDRDPEFYKFLQENDQSLLNFSDSDSSEEEE
GPFHSLPDVLEEASEEEDGAEEGEDGDRVPRGLKGKKNSVPVTVAMVERWKQA
AKQRLTPKLFHEVVQAFRAAVATTRGDQESAEANKFQVTDSAAFNALVTFCIRD
LIGCLQKLLFGKVAKDSSRMLQPSSSPLWGKLRVDIKAYLGSAIQLVSCLSETTV
LAAVLRHISVLVPCFLTFPKQCRMLLKRMVVVWSTGEESLRVLAFLVLSRVCRH
KKDTFLGPVLKQMYITYVRNCKFTSPGALPFISFMQWTLTELLALEPGVAYQHA
FLYIRQLAIHLRNAMTTRKKETYQSVYNWQYVHCLFLWCRVLSTAGPSEALQPL
VYPLAQVIIGCIKLIPTARFYPLRMHCIRALTLLSGSSGAFIPVLPFILEMFQQVDFN
RKPGRMSSKPINFSVILKLSNVNLQEKAYRDGLVEQLYDLTLEYLHSQAHCIGFP
ELVLPVVLQLKSFLRECKVANYCRQVQQLLGKVQENSAYICSRRQRVSFGVSEQ
QAVEAWEKLTREEGTPLTLYYSHWRKLRDREIQLEISGKERLEDLNFPEIKRRKM
ADRKDEDRKQFKDLFDLNSSEEDDTEGFSERGILRPLSTRHGVEDDEEDEEEGEE
DSSNSEDGDPDAEAGLAPGELQQLAQGPEDELEDLQLSEDD* GT:PL:GQ 1/1:182,33,0:63


ここで登場した、granthamScoreとpolyPhen、ほかにもscorePhastCons(CP)、consScoreGERP(CG)などは、塩基の変異によりアミノ酸が置換されるとき、これがタンパク質にどれくらい影響を及ぼすかの予測された指標です。

Grantham Scoreは、アミノ酸が変わるときに隣近所のアミノ酸との間にどれだけ化学的な影響を及ぼすか、分子量や極性などをもとに数値化しています。
conservative (0-50)、moderately conservative (51-100)、moderately radical (101-150)、radical (>151) というような分類もあるようです(Li et al. J Mol evol. 21, 58-71(1984).)

PolyPhen は、他の生物種とのホモログの配列情報から、変異があった箇所の配列保存性、化学的な特徴、タンパク質構造やドメイン情報をもとに、この変異がタンパク質の機能に及ぼす影響を数値化します。
probably damaging (>2.00)、possibly damaging (1.50-1.99)、potentially damaging (1.25-1.49)、borderline (1.00-1.24)、benign (0.00-0.99) という分類があるようで、SeattleSeqではこの分類表記になっていますね。
ちなみに、PolyPhenは現在、PolyPhen-2というのもありますが、こちらはアカデミック・非営利機関のみ利用できます。

SNVを探してから、missense のSNVのみを抽出し、そのアミノ酸変異がタンパク質にどれくらい影響を及ぼすのか、という研究は昔からありました。
現在はNGSのおかげでどんどん新しいSNVが見つかっています。
その塩基の変異が、タンパク質レベルでどのように働くのか、というテーマは今後も続いていくでしょう。
まずはPolyPhenなどの予測アルゴリズムを用いて、分子レベルの機能変化をスコア化し、数個に絞った後で、(今はここで終わっている論文がほとんどですが)今後はタンパク質の3次元構造モデリングなどを行ったり、アッセイに持ち込んで本当にタンパク質の活性が変化するのかを確かめたり、する研究も増えていくかもしれません。


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